2024年9月、約5年ぶりにフィリピン、ブスアンガ島を訪れた。
フィリピンでもパラワン州に属するブスアンガ島の周辺エリアは、現地では「コロン」という名で呼ばれている。これは、空港のあるブスアンガ島がメインアイランドであるが、観光地として名高いコロン島がすぐ近くにあり、更にはブスアンガ島にある最も大きな街がコロンタウンと呼ばれ(コロン島ではない)、目の前に広がる海はコロン湾というところで、この辺りを一般的には「コロン」と呼ぶことが多くなっている。私たちはマニラ経由で訪れたが、他にもセブ島などを経由して訪れることもできるようだ。
空港から出て街までは40分〜60分ほど。牧草地が広がり山羊や牛たちがのんびりと過ごしているのを横目に街へと車は走っていく。宿泊予定のホテルに空港送迎を頼むのも良いが、空港からは街へ向かう乗り合いのワゴンなども空港で待機している(300ペソ程度)ので、それに乗り込むのも良いだろう。徐々に建物が増えて感じるフィリピン特有の雑踏感。コロンタウンに到着すると小さい街ながらヨーロピアンなどが多く来ていることから商店や土産物屋、レストランなどはかなり多い。値段はそれなりの観光地価格となっているが、旅行者には過ごしやすい街と感じる。折角なので、皆さんがこのコロンを旅したいと訪れた場合、レックダイビングをする為にはどうしたら良いかというのを示しておけたらと思う。
日本人が得ることのできるコロンのダイビング情報はかなり極端である。日本では、ダイビングを専門とする旅行代理店が「ジュゴンに会える島」として販売している為に、コロンの話をしても、ジュゴンは知っているけど沈船があるなんて知らなかったというダイバーにも過去多く出会っている。その理由として、ジュゴンダイビングをする場合、島の「北部」にある離島にステイをして、北部に拠点を構えるダイビングショップを使う場合がほとんどで、南部の情報が極端に少ない為である。しかしながら、このブスアンガ島にあるダイビングショップのほとんどは「南部」の街中に固まっており、それらのショップの多くは「コロン湾空襲に起因する日本の沈没艦船群」を潜っているのだが、日本の旅行代理店はほとんど取り扱っていないのが実情である。
◉目次
コロンの水中戦跡一覧 |
・秋津洲
・伊良湖
・興川丸(太平丸)
・興業丸
・おりんぴあ丸
・MORAZAN(MARU)(越海丸)
・照風丸
・得撫丸(LUSONG GUNBOAT)
・スケルトンレック(日本や戦争とは無関係)
・南進丸
・旭山丸(北部)
・一式戦闘機 隼(北部)
上記マップに記載されていないもの一部あるが、(2024年現在)約10の沈没艦船と飛行機が眠っている。(他にも砂利運搬船などもあるがここでは割愛する。)先ほど述べた、ジュゴンと出会う「北部」に滞在する場合、「旭山丸」には潜る機会もあるかもしれない。同じく北部にあるコロンの唯一の航空機である「隼」は、深場にある為に潜る為には条件があり、ダイブセンターに確認が必要だ。それ以外の沈没船(真西にある南進丸を除く)は、レジャー(スポーツ)ダイビングにおける、アドバンス相当のライセンスを持っていれば、全て潜ることができるだろう。一つ、注意をする点として、「秋津洲」や「伊良湖」といった有名な沈没船は問題ないのだが、ショップによって「沈船の名前が異なる場合がある」ということだ。これは、初期の調査によって同定された船名と、その後の調査によって違う船であると発表された船がある為である。これは、私が1年目と2年目で違うダイブマスターにお世話になった際、同じ船なのに違う名前を言われ違和感を感じ分かったことだが、その後、色々と調べてみたものの確たる証拠をどちらも得ることができずに今に至っている。
コロンのダイビングスタイル |
このコロンにおいて、日系ショップは2024年現在、「存在しない」。ローカル系のショップ、アメリカ人経営のショップ、韓国系のショップなどがある。コロナ禍を経て(現在の領土問題を含む社会情勢的な理由もあるかもしれないが。)勢いのあった中華系のショップはほとんどなくなってしまったようだ。どこのショップを利用しても、フィリピン特有のバンカーボートで過ごす1日はとてもゆったりとして素晴らしい時間となるだろう。
このコロンでのダイビングは1日3本潜ることが多く、2本が沈船、最後の1本がリーフやコーラルダイビングということがショップ多いのではないだろうか。これは沈船ポイントの水深にも影響しており、3本目に適した沈船が少ないという理由からだ。
自社でボートを持っているショップ、持っていないショップとあるが、他のゲストもいることから「ポイントのリクエストは可能だが、100%叶うとは限らない。」これは個人で旅する場合は仕方のない話なので、余裕を持って旅行の日程を組む必要があるだろう。また、日本人の場合、「集合時間にホテルに迎えに来てくれる」という流れが常識となっているかもしれないが、ここでは「ボート集合」や「ショップ集合」が基本である。街にはトライシクル(バイクのタクシー)が多くあり、移動に困ることはないだろう。距離にもよるが街中の移動であれば1人40〜50ペソくらいで乗れることから、ぜひチャレンジしてみて欲しい。
・世界有数(?)のペネトレーション(船内探索)天国
あくまで私の経験の範囲内の話であれば、コロンにおいてレックダイビングをする魅力の一つとして「ペネトレーション」をすごくする。心配になるくらいすごくする。一人ずつ通れないような場所や、小さな穴、一度入ったら出口がわからない迷路のような閉鎖環境をもグイグイと進んでいく。勿論、ブリーフィングの際にルートを確認する際にそれも伝えられるとは思うのだが、もし苦手なのであればはっきりと最初にダイブマスター(ガイド)に伝えておくべきである。私たちが訪れた際にも沈船は好きだが閉所が苦手なダイバーがおり、外周をメイン、中は少しだけというダイブプランを組んでもらったが、それでも入ろうとしていたらしい。日本人は何かを伝えるのが苦手でつい我慢をしてしまうことが多いが、NGな時ははっきりと無理と身振り手振りで知らせてもらえたらと思う。
コロンの沈船群は湾内にあり、雨などは島から赤土などが流れ込み、透明度の悪くなることもある。前にいるのがダイブマスターならまだしも、複数人のゲストの場合、前のゲストが後ろのダイバーを気にする余裕がない場合もあり、少しでも目を離すと閉鎖環境でロストという最悪の事態も想定される。必ずライトは持参してもらいたいと思う。(レンタルもあるだろうが性能が良いとは限らないため。)ペネトレーションはできるだけ少人数で行くことが望ましい。
・ガスの種類
コロンにおいてはナイトロックスの仕様を強くお勧めする。私たちのチームの場合、一番深くなる伊良湖で潜る際は27%、それ以外は32%のナイトロックスを用意してもらった。体に優しいだけでなく、浅瀬のない箱型潜水でそれなりの水深をキープすることから、ダイブタイムにも影響が出る。チーム全員が使わないとNDL(無限圧潜水)をエアーに合わせられてしまう可能性はあるが、少しでも長く安全に潜っていたいのであればやはり必須だろう。料金的には1本300-500ペソくらいなようだ。ただ、私たちが使った時は、シリンダーによって2〜3%誤差がある時があった。お姫様、お殿様ダイビングと言われ「すべて準備をしてくれる」フィリピンのダイビングスタイルは非常にありがたいものだが、チェックは現地のダイブマスター任せにせず、潜る前にしっかりとアナライザーで測り、ダイブコンピューターをセットしてほしい。
コロンの沈船シーズン |
コロンにおいての沈船のベストシーズンは3月から5月。これはフィリピンにおける乾季に当たる時期にあたり、最も透明度も上がる時期である。逆に雨季(日本の夏くらいの時期)は雨が降り透明度も下がることや、台風の影響などもある為にあまりお勧めはできない。余談だが、2024年に私たちが訪れた際には台風の影響により、滑走路が冠水し、飛行機が数日間キャンセルに合うという憂き目にあった。コロンからはマニラ行きのフェリーなども出ているようだが、忘れてはならないのはコロンは空港も小さく、マニラやセブから国内線に乗り換えて到着する、まさに”秘境”に分類されるようなエリアである。くれぐれも余裕を持って旅の計画を立ててもらいたいと思う。
コロンのダイビングショップ事情 |
コロンにおいてダイビングショップを検索すると、日本語では難しいが、英語だといくつかヒットしたり、グーグルマップで検索をするとかなりのダイビングショップを見つけることができる。しかしながら、ホームページを持たずにSNSやトリップアドバイザーなど外部の旅行サイトなどで申し込みをする形で営業しているお店も多い。また、ホームページなどを見ても「価格が記載されていない」ところも多く、だからといって法外な値段を取るお店があるとは思わないが、しっかりといくつかのショップの価格やプランを比較して選ぶと良いだろう。
コロンで沈船ばかり潜る為には? |
他の地域ではボートチャーターなどをお勧めしたが、特にこのコロンにおいては沈船以外を潜ることはほぼないので安心して良いだろう。ただしダイビングショップは南部にあるショップに限る。前述の通り、北部にはほとんど沈船がない為である。南部のショップが北部に遠征をしてくれることもあるが、人数縛りや車を使った陸路での移動パターンもあり、相談してみると良いだろう。
ぜひこれを読んだぜひ皆さんにはコロンを訪れその歴史に触れてもらえたらと思う。
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